高機能型浮上油・浮遊スラッジ回収装置「エコモア」

 工作機械のクーラント液は、近年水溶性が多く使われているが、加工物から持ち込まれる油や工作機械本体摺動部からの潤滑汕等の油脂成分の混入により、液の劣化・腐敗が促進され、結果的に加工品の加工面品質の低下、作業環境の悪化につながることが多い。
 一般的に、クーラント液の清浄度管理のためには、液中を漂う細かな切り屑粉・研磨粉等のSS(Suspended Solid)除去のためのマグネットセパレータ、液体サイクロン、遠心分離装置、各種フィルタ群からなる濾過装置、同じく液中で分散・エマルジョン化した汕分除去のための精密濾過膜分離装置といった濾過システムが主体で考えられている。
 しかし、前述の混入する油の多くは、クーラントタンク内で浮上油となり、Tramp Oilと言われるように、液表層面を漂う油となり諸々の悪さをする。多くの場合、浮上油は前述で述べたクーラント液濾過設備では回収が不向きで、それ用に単独の装置で回収分離が行われることが多い。
 ベルト式オイルスキマーによる油のかきあげ分離や、油と水の比重差を利用した分離層による浮上分離が一般的で現場でも見受けられる。最近これらのタイプを使う生産現場から「もう少し高性能のもので良いものはないか?」という声を耳にするようになった。
 このため、昨年、浮遊スラッジ交じりの浮上油を対象に、独自の吸引ノズルにより液面変動に追随し効率よく吸引回収できる吸引部と比重差による浮上分離を繰り返して分離効果を上げたトリプル分離層(3段分離)からなる、シンプル、コンパクトかつパワフル分離できる浮上油回収装置「エコモア」を開発し、最近上市した。
 お陰で、生産現場の方々から好評をいただき始めたので、「エコモア」の特徴を紹介したい。

油水分離の各方式

一般的に油水からの油分の除去は、下の表の各方式が用いられており、基本的には油の混入状態すなわち浮上油なのか液中の分散油あるいは乳化油なのかとか、油分分離除去後の液の清浄度をどの程度のレベルまで確保したいのかにもより、適した方式が決まる。もちろんコストも大きな決定要因であり、両方を勘案して装置の導入が検討される。

名称 原理 特徴 コスト 分離性能
イニシャル メンテナンス
ベルトスキマー 新汕性ベルトに油分を吸着させスクルーバーでかき落す。(吸着) タンクに直取り付け。分離回収油の含水率高い。小能力。回収油をさらに比重分離層で分離必要。 ×
比重分離 比重差に基づく液中の油滴の浮上力を利用し分離。(浮上) 最近の浮上油分離によく用いられる。
(△)
凝集エレメント (コアレッサー) 膜フィルターを油分が通過する際、油の粗大化図り捕捉させる。(凝集) フィルター・詰りに伴い交換必要。スラッジが多い場合不向き。 ×
電気凝集 静電フィルターに電解をかけ油粒子を帯電凝集させる。(凝集) クーラント液では液中イオン溶出変色の問題あり。
限外ろ過 UF膜(中空糸膜)を用いたろ過。エマルジョン油分の除去には効果大。(クロスフロー透過) 濾過量 が小さいため、設備が大きくなる。前処理(粗ろ過)が必要。 × ×

分離性能  ◎:非常に高い ○:高い △:中程度 ×:低い
コスト   ◎:安価 ○:比較的安価 △:中程度 ×:高価

「エコモア」の基本的な性能・効果と適用例

 冒頭で述べたように、多くの生産現場ではクーラント液濾過の重要性を認識し、マグネットセパレータや各種フィルター装置を導入するが、浮上油回収については二次的に捉え、そのための装置を導入するにしてもあまりコストをかけずに、そこそこ取れたらよいといった認識もあるのではなかろうか。これは、浮上油回収装置導入の単独効果が定量的に把握しづらいことによるものと思う。
 こういった背景もあり、従来浮上油回収装置は、ベルトスキマーが安価・簡便性もあり用いられ、もう少し処理能力のほしいユーザーには簡単な比重分離層が用いられてきた。
 いずれも回収分離能力は数Little/分程度と小さいため、今回比重分離方式を踏襲しつつも回収分離能力を高め、10~20Little/分は安定して吸引回収分離できる「エコモア」を開発した。
 我々としては、今回の「エコモア」の採用により導入側のコスト削減メリット、例えばクーラント浮上油の場合であれば、刃物チップの磨耗減少による刃物コスト削減、チップ交換に伴う稼働ロス削減、ワークの加工面粗度改善といった直接メリットやクーラント腐敗臭防止の職場環境改善といった間接的なメリットにつながることをより多くの生産現場の方々に知っていただきたいと考えている。
 要は、浮上油回収装置がしっかりしているものだと、導入済のほかの濾過装置も機能を発揮し相乗効果があるのだということが言える。
 もちろん「エコモア」は、クーラントだけでなく洗浄ラインでの洗浄液やその他の業種の処理加工液に生じる浮上油や液表層を浮遊する微細スラッジも回収分離することにも適用している。